糖尿病の薬

 
 
 
 

イヌによくみられる内分泌の病気に糖尿病があります。これには2つのタイプがあります。ひとつは、すい臓のベータ細胞が破壊されてインスリンが十分につくられなくなることが原因でおこる代謝の異常です。これを「インスリン依存性糖尿病(タイプ1糖尿病)」といいます。

もうひとつは、インスリンはきちんとつくられているが、そのはたらきが悪くなるために代謝が異常になるもので、「インスリン非依存性糖尿病(タイプ2糖尿病)」といいます。イヌの糖尿病のほとんどはこのタイプです。

糖尿病では、血糖値(血液中のブドウ糖の濃度)が高くなり、尿に糖が出ます。さらに、多尿、多飲、多食。体重減少などの症状がみられます。病気が進行すると精神的にうつ状態になったり、食欲が低下したり、下痢と嘔吐をくり返すようになります。

さらに進むと、目に白内障の症状が出ることも特徴です。白内障をきっかけに、糖尿病が発見されることもよくあります。その他の症状としては、免疫のはたらきが低下し感染症にかかりやすくなります。糖尿病がひきおこすこれらの症状を「問糖尿病の合併症」といいます。

次に糖尿病の治療に用いられる代表的な薬の種類と薬品名を紹介し、最後に使用上の注意を述べます。

 

●糖尿病治療薬

 →インスリンをおぎなう

 →糖尿病の治療薬の代表は、インスリン製剤です。
  これは、不足したインスリンを外からおぎなうためのものです。
  イヌの糖尿病は基本的には、肥満などが原因となって生じるインスリン
  非依存症のものです。しかし、症状が進んでから発見されることが多いため、
  そのときにはすでに二次的にすい臓のベータ細胞に障害が生じています。
  そのため多くの場合はインスリンを補給する必要があります。

  ほかに、すい臓の弱まったはたらきを助けてインスリンの分泌をうながす薬
  や体組織でのインスリンの吸収をよくする薬があります。

  ▲インスリン製剤

   現在、治療薬として使われているインスリンには、ウシやブタのすい臓
   からとり出したインスリンと、バイオテクノロジーによって大腸菌を利
   用してつくられるヒト型インスリンがあります。
   最近使われているインスリンは大部分がヒト型です。

   インスリンは合計51個のアミノ酸からなるホルモンですが、動物の種類
   によってアミノ酸の組成が少しずつ違っています。
   しかし、ほかのホルモンと比べると違いは小さく、別の動物のインスリン
   を投与しても免疫反応がおこらないという特徴があります。
   インスリンは消化管からは吸収されないので、注射で投与します。

   インスリン製剤には効果をあらわすまでの時間と作用がつづく時間が
   異なる3つのタイプ(速効型、中間型、遅効型)およびそれらを組み
   合わせた合剤があり、イヌの症状や生活環境によって使い分けています。

   正常なすい臓からのインスリンの分泌には、1日中少しずつ分泌される
   基礎分泌と、食事の後に血糖値が上がったときに分泌される追加分泌が
   あります。このような生理的な分泌を、さきの3つのタイプのインスリン
   を組み合わせることによって人工的に再現しようとする治療法も試みられ
   ています。これを「強化インスリン療法」といいます。

   個々のイヌに適したインスリンの組み合わせや投与する量を決めるために、
   事前に動物病院1~2週間入院することが必要な場合もあります。

  ▲スルフォルニルウレア剤

   すい臓にはたらいてインスリンの分泌をふやす薬です。
   グリベンクラミド、トルブタミドなどがあります。
   イヌが糖尿病になると、ほとんどの場合、インスリンをつくるすい臓の
   ベータ細胞に障害が生じます。
   したがって、これらの薬を使っても大きな効果は期待できませんが、
   インスリンの投与量を少しでもへらすために補助的に用いることがあります。

  ▲その他の薬

   インスリンには次の2つの作用があります。

   ①肝臓などの臓器にはたらいてブドウ糖をグリコーゲンという物質に変え、
    血糖値を下げる。
   ②末梢の組織や臓器でブドウ糖を細胞にとりこませることによって、
    血糖値を下げる。

   そのため糖尿病になると、インスリンが不足し、末梢の組織や臓器での
   糖のとりこみが低下します。
   そこで、これらの臓器での糖のとりこみを高めるためにビグアナイド薬
   (ブフォルミン、メトフォルミン)という薬が使われます。
   また、腸管からの糖類の吸収をおさえるためにアルファグルコシダーゼ
   阻害薬(アカルボス、ボグリボス)などが用いられます。


☆使用のときの注意

 糖尿病の治療は、血糖値の高い状態をいかにうまくコントロールするかに
 かかっています。毎日の治療と世話が必要なので、飼い主が病気の性質を
 よく理解していないと、よい結果は生まれません。
 病気の状態や飼育環境によっても治療法は異なりますが、以下にその例をあげます。

 (1)毎朝イヌの尿をとり、尿検査用試験紙を使って糖を「ケトン体」の検査を
  します。ケトン体は、インスリンの不足によりケトアシドーシスという病気を
  併発したときに尿中にでます。
  これは命にかかわる病気なので、ケトン体が見つかれば、すぐに獣医師の診察
  を受けます。
 (2)検査結果に異常がなければ、定められた1日分の食餌量4分の1から
  3分の1を与えます。炭水化物はただちにブドウ糖に変わるので、量をひか
  えます。繊維質は小腸でのブドウ糖の吸収を遅らせるはたらきがあるので、
  これはたくさんとらせるようにします。

 (3)食べものはすぐに吸収されて血糖値を上げるので、食餌の直後に決めら
  れた量のインスリンを注射します(食餌をとらなかった場合はインスリンの
  量を半分にします)。

 (4)夕方に残りの量の食餌を与えます。
  そのあとすぐに2回目のインスリン注射をします。

 インスリンの量をまちがえて過剰に投与したり、食餌を与えずにインスリン
 だけを投与したり、あるいはイヌがはげしい運動をしたような場合、血糖値が
 急激に下がって意識がもうろうとした状態になることがあります。
 ひどい場合は昏睡状態におちいります。

 これは「低血糖昏睡」とよばれ、インスリンが不足しておこる「糖尿病昏睡」
 とは異なります。
 よだれを垂らし、けいれんをおこすようであれば、かなり危険な状態です。

 糖尿病が進行し、合併症が出てくるとそれらに対する治療も必要とするため、
 複数の種類の薬が同時に処方されることになります。


■ TEL
0968-38-5100
※現在、夜間・深夜診療を行っておりません。
 
通常診療
 
 
 
 
 
 
※現在、夜間・深夜診療を行っておりません。