回虫や条虫などの駆虫薬

 
 
 

イヌの体にはさまざまな寄生虫がいます。ノミやダニなど体の表面に寄生するものを「外部寄生虫」といい、体の内部に寄生するものを「内部寄生虫」といいます。

イヌによくみられる内部寄生虫には、回虫、条虫、鉤虫、鞭虫、フィラリア(糸状虫)などがあります。これらをまとめて蠕虫といい、蠕虫を駆除する(殺して体の外に出す、あるいは体内で吸収させる)薬を駆虫薬といいます。フィラリアの駆虫薬は次の項目で説明します。

蠕虫のほとんどは小腸や大腸などの消化管に寄生しますが、一部はほかの臓器の中に侵入します。一般に、消化管内の寄生虫はあまり悪さをしませんが、寄生虫の数が多いときや、抵抗力のない子イヌが寄生虫に感染した場合、イヌの栄養状態が悪化して問題が生じます。また、寄生虫が臓器の中に入りこむと、いろいろな障害をおこします。

 


★回虫

 小腸に寄生します。一般に成犬ではなく、子イヌの小腸にみられるのが特徴です。
 成犬の体にもいろいろな臓器の中に回虫の幼虫がひそんでいます。
 これに感染したメスが妊娠すると、胎盤を通して子イヌに幼虫が移ります。
 そのため生まれてまもない子イヌのおなかの中で幼虫が成虫になり、
 腸のはたらきをおかして、ときには死に至らしめます。

★条虫

 条虫にはマンソン裂頭条虫、瓜実条虫(イヌ条虫)、単包条虫、多包条虫など
 があります。
 マンソン裂頭条虫は、俗にサナダ虫とよばれる細長いきしめんのような
 寄生虫です。
 瓜実条虫は、イヌの便の中から瓜のタネに似た体節が見つかることから
 この名があり、日本のイヌによくみられます。

 マンソン裂頭条虫の感染は、イヌがこの寄生虫をもつカエルなどを食べること
 によっておこります。瓜実条虫はノミやシラミを介して感染します。
 条虫に感染してもほとんどの場合、めだった症状はあらわれません。
 しかし、感染の程度がひどいと発育不全、栄養障害、腹痛、下痢などの症状が
 おこります。

★鉤虫

 小型の寄生虫で、小腸に寄生します。イヌが土や水の中にいる幼虫を
 呑みこんだり、皮膚から虫が体に入ることによって感染します。
 鉤虫はイヌの腸の壁にはりついて多量の血を吸うので、貧血になります。
 とくに子イヌの場合、その症状は重く、しばしば死に至ります。

★鞭虫

 盲腸に寄生します。
 ひどい場合は盲腸に炎症がおき、下痢や血便などをひきおこします。



 イヌにこれらの内部寄生虫が寄生していることがわかれば、
 ただちに駆虫薬を与えます。

 ●一般の駆虫薬

 →回虫や条虫などを殺す
 →駆虫薬にはいろいろな種類があり、多くの寄生虫に効果があるものや
  特定の寄生虫にしか効かないものがあります。

  ▲マクロライド類
   回虫をはじめとするほとんどすべての蠕虫に有効です。
   とくにフィラリア(イヌ糸状虫)の感染を予防する薬として広く
   用いられているため、この予防をしていれば自然と回虫、鉤虫の駆除を
   していることになります。
   これにはイベルメクチン、ミルベマイシンオキシム、モキシデクチンなど
   があります。

  ▲ベンズイミダゾール類
   回虫、鉤虫、鞭虫、さらに条虫や吸虫と幅広い効果があり、
   安全性にもすぐれているため、イヌの駆虫薬としてはもっとも多く
   用いられている薬です。
   この薬は、寄生虫の細胞の骨格にあたる微小管に強く作用して、
   細胞を変化させ寄生虫を餓死させます。
   フルペンタゾール、パーペンタゾール、フェバンテルなどがあります。

  ▲その他の薬
   ピペラジンは回虫と鉤虫に効果があります。
   古くから使用されており安価な薬ですが、安全性と有効性に問題が
   あるため、最近では少しずつ使用頻度がへっています。

   プラジクアンテルは条虫に効きます。経口剤のほかに注射剤もあり、
   安全性が高いためによく使われます。寄生虫の体表の細胞を変化させて
   殺しますが、虫がブドウ糖を吸収するのをさまたげたり、けいれんを
   おこさせてまひさせる作用もあります。

   ニトロスカネートは回虫、鉤虫、条虫(イヌ条虫)に効果を発揮します。
   パモ酸ピランテルは回虫、鉤虫、鞭虫に効果があり、よく使われます。
   寄生虫の筋肉を興奮させ、けいれん性のまひをおこします。
   ブナミジンは条虫に使用します。寄生虫がブドウ糖を吸収するのをさまたげ、
   駆虫効果を発揮します。

   ほかにピランテル、ジクロロフェン、ジソフェノール、アレコリンなどが
   あります。

☆使用のときの注意

 駆虫薬を与えると、副作用として嘔吐、下痢、食欲不振などがおこります。
 しかし駆虫薬は長期にわたって投与しつづけるものではなく、通常は1回、
 多くて2~3回投与すれば、寄生虫は駆除されます。
 したがって副作用が問題となることは少ないようです。

 ただし、ある種の駆虫薬には催奇形性(胎児の奇形を生じる危険性)があります。
 また、イヌの種類によって駆虫薬に対する反応が異なります。
 駆虫薬を用いるときは、イヌの健康状態や妊娠の可能性などを考え、薬を
 与える時期や量などにも十分な注意をはらいます。


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※現在、夜間・深夜診療を行っておりません。
 
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