
目の薬

目の病気は、イヌでは日常的にみられます。
目はイヌの体の中でもっとも繊細で鋭敏な機能(視覚)をもっているうえ、
粘膜が外に露出していて傷つきやすく、細菌やウイルスなどに感染しやすい
ためです。
よくみられる病気に、結膜炎、角膜炎、眼瞼(まぶた)炎などがあります。
これらは細菌の感染やアレルギーなどが原因で、目に炎症がおこる病気です。
ほかに、老犬に多くみられる白内障(水晶体が白くにごる病気)や、視野が
せまくなる緑内障(眼圧が高くなる病気)などがあります。
よく用いられる目の薬には、液状の点眼液と軟膏があります。
点眼液は滅菌処理が容易で、使用法も簡単です。
しかしイヌ自身の涙によってすぐにうすめられてしまううえ、
しばらくすると涙といっしょに鼻に排出されてしまいます。
そのため薬が目にふれている時間が短く、1日に何度もささなくてはならない
という欠点があります。
一方、軟膏はワセリン、ラノリン、ピーナツ油などに薬をとかしたもので、
これを塗ると目にふれている時間が長いという長所があります。
しかし、たとえば角膜に塗ると角膜の表面に薬の膜ができ、イヌの視覚を
さまたげたり不快感を与えたりします。
そこで、昼は点眼薬を用い、夜は軟膏を塗るというように、状況に応じて薬
の形態を変えることもあります。
目の病気の治療薬は、外用薬(体の表面につける薬)とはかぎりません。
眼球内部に問題がある場合、薬の種類によっては、目の表面につけても
吸収されず患部にとどかないことがあります。
その場合、注射によって患部に直接、薬が作用するようにします。
さらに、飲み薬として与えて全身に薬がまわるようにすることもあります。
●抗生物質/合成抗菌薬
→細菌を殺し、感染を予防
→イヌの目の病気の多くは、細菌の感染が原因です。
その治療には、多くの種類の細菌に対して効果をもつ「広域スペクト
ラム抗生物質」を使ったり、数種類の抗生物質をまぜた配合剤を用い
るのが一般的です。
これらの抗生物質または抗菌薬には、クロラムフェニコール、ペニシリン、
ミクロノマイシン、エリスロマイシン、コリスチン、それにオフロキサシン
などがあります。
●抗炎症薬
→炎症性の目の病気に効く
→炎症をしずめる薬にはステロイド系と非ステロイド系があり、
目の病気の治療には両方が使われます。
▲副腎皮質ステロイド薬
デキサメタゾン、フルオメトロンなどがあり、アレルギーをふくめた
炎症性の眼病にはきわめて有効な薬です。しかし長期にわたって使用すると
免疫機構に耐性が生じて、はじめほどの効果があらわれなくなったり、
また投与を止めたときに症状がかえって悪化するリバウンドなどの副作用を
ひきおこすため、使用には十分な注意が必要です。
この薬を使うと細菌に感染しているときには症状を悪化させてしまうので、
その場合は同時に抗生物質や合成抗菌薬を用います。
また、傷の治りをおそくする副作用ももつため、角膜潰瘍などがある場合には
使いません。
イヌが白内障や緑内障を併発している場合にも、この薬は使用できません。
点眼によってはとどかない眼球の深部の炎症に対しては、
全身にまわるよう飲み薬や注射によって投与することもあります。
▲非ステロイド系抗炎症薬
炎症にかかわるプロスタグランジンなどの化学物質がつくられるのをはばんで、
炎症をしずめます。
インドメタシン、アズレンスンホン酸ナトリウム、ジクロフェナクナトリウム
などあります。
●抗アレルギー薬
→アレルギー性の眼病に効く
→アレルギーによる炎症反応をおさえる薬です。
いろいろなタイプがあり、症状にあわせて使います。
▲抗ヒスタミン薬
アレルギー性結膜炎の治療に用います。
炎症をおこした部分の細胞(肥満細胞)から出るヒスタミンの作用を
さまたげ、かゆみや発赤を軽減します。
クロルフェニラミン、ピリラミンなどがあります。
▲アレルギーメディエーター遊離抑制薬
アレルギー反応に関与する化学物質の放出をおさえることによって、
炎症反応をやわらげます。
これにはクロモグリク酸ナトリウム、ケトチフェン、
ペミロラストなどがあります。
これらの薬は抗ヒスタミン作用や抗ロイコトリエン作用も発揮します。
効果はあまり強くはありませんが、アレルギー性の目の病気の治療に
最初に用いられる薬です。
●収れん薬
→慢性の結膜炎の治療薬
→結膜の粘膜の表層たんぱく質とくっついて被膜をつくり、
患部の組織を刺激して組織の新生をうながします。
慢性の結膜炎に有効です。硫酸亜鉛を薬として用います。
●抗ウイルス薬
→ヘルペスウイルスを殺す
→この薬はヘルペスウイルスの感染によっておこる角膜炎に用いられます。
アシクロビル、イドクスウリジンなどがあります。
●白内障の薬
→病気の進行をおくらせる
→白内障は目の水晶体のたんぱく質が変化して不透明になるために
おこると考えています
このたんぱく質の変性をおさえることによって白内障の進行を
おくらせる効果をもつ薬として、ピレノキシンがあります。
また、水晶体のたんぱく質を保護して白濁を防ぐ薬として、
還元型グルタチオンなどが点眼剤として使われます。
しかし、これらの薬はどれも効果が十分ではなく、病気の進行を
おくらせる程度と考えた方がよいでしょう。
●緑内障の薬
→眼圧を下げる
→副交感神経のはたらきをおさえる薬、ピロカルピンは、眼房水の排出を
うながし、眼圧を低下させる効果があります。
ほかにカルテオロール、エピネフリン、ドルゾラミドなども使われます。
これらは点眼薬として使用します。
またアセタゾラミド、メタゾラミドなどの利尿薬は内服薬としても
緑内障の治療に用いられます。
☆使用のときの注意
目の病気の治療には専門的な知識が必要なので、素人療法は禁物です。
液体の目薬は、いったん開封して外気にふれると、酸性度(ph値)が
変化したり、成分が酸化して分解が早まったりします。
また、細菌によって薬が汚染される心配もあります。
そこで点眼液は必ず清潔な手指でとりあつかい、保管方法や有効期限を守る
など十分な注意が必要です。