
皮膚腫瘍・肛門周囲腺腫

犬における器官別の腫瘍発生率のもっとも高いものは皮膚腫瘍で皮膚腫瘍は
乳頭腫などの良性のものから、扁平上皮がん、黒色腫(メラノーマ)などの
悪性で転移しやすいものまで多様である。
また犬特有の皮膚腫瘍として、肛門周囲や尾のつけ根および包皮の外側の皮
下に散在する肛門周囲腺の腫瘍がある。
●皮膚腫瘍
【分類と特徴】
皮膚は外界と直接接する表皮、その下の真皮と皮下組織(脂肪組織)よりなる。
犬では部位によっては真皮と皮下組織との間に皮筋という筋肉があり、皮膚局
所を意識的にふるわせることができる。
また、皮膚には毛包や脂腺、汗腺といった器官が存在する。
皮膚の腫瘍はそれらの皮膚を構成しているさまざまな種類の細胞から発生する
ために腫瘍の種類も多い。
皮膚の腫瘍は、治療は不要な良性のものから浸潤度や転移の確率の高い悪性の
ものまで多種多様である。
表皮を形成する上皮細胞系の腫瘍としては乳頭腫、扁平上皮がん、基底細胞腫
各種の腺がん、肛門周囲腺腫などがある。
また、真皮や皮下組織などの非上皮系の腫瘍としては線維腫、肥満細胞腫、線
維肉腫、脂肪腫などがある。
皮膚腫瘍の発生頻度は、年齢とともに増加する傾向があり、8~10歳齢に好
発する。性差はほとんどないが肛門周囲腺腫は雄に多く発生する。
犬種ではボクサー、スコティッシュ・テリアに発生が多く、ペキニーズ、ポメ
ラニアン、チワワでは少ないといわれている。
【原因】
犬の皮膚腫瘍のあるものはウイルス感染や日光の紫外線に起因して発生するこ
とが知られている。
とくに白色の被毛の犬種では紫外線に起因して扁平上皮がんや黒色腫が発生する。
しかし、正確な原因については不明である。
【診断】
皮膚腫瘍は飼い主が犬をなでたり、毛づくろいをする際に「しこり」をして触れ
たり目にふれやすい。
腫瘤として体表にもりあがっている場合には容易に発見できるが、長毛の犬や皮
下組織など深部の腫瘍などでは発見が遅れることが多い。
また腫瘍とは別の腫瘤(化膿性疾患、外傷など)との区別も大切である。
●肛門周囲腺腫
この腫瘍はおもに肛門の周囲に発生し、硬結した(しこり)として認められる。
良性の肛門周囲腺腫は雄に多くみられ、雌では悪性の肛門周囲腺腫がんがほと
んどである。
肛門周囲腺腫は雄性ホルモンが関与しているため去勢した犬では本症の発生が
ほとんどみられず、また腫瘍の退縮も期待できることがある。
腫瘍が良性であってもある程度発育すると腫瘍の表面に潰瘍を形成し出血、化膿
排便障害をひきおこす。
また、悪性のものでは周囲のリンパ節、腹腔内蔵器、脊椎などに転移して重篤な
症状を発現することもある。
一般にこの腫瘍は良性と診断されても経過とともに悪性に変化することがあり
摘出手術後の再発率も高い。
近接した臓器として、肛門囊にも同様な腺腫または腺がんが発生することがある。