
湿疹

皮膚(表皮ならびに真皮上層)に認められる急性あるは慢性の痒みを伴う
無菌性の皮膚炎を湿疹と称する。
しかしながら、接触性、アトピー性、アレルギー性、脂漏性、あるいは薬
物性皮膚炎など原因の明らかな皮膚炎以外(これらをまとめて湿疹とする
場合もある)の分類不可能な原因不明の皮膚炎(ほとんどは接触性皮膚炎
に含まれると考えられている)を一括して湿疹として取り扱うため、現在
湿疹という用語はつかわれなくなってきている。
皮膚は動物の体が外界お環境に接する部位に位置し、さまざまな外部環境
刺激(物理的、科学的・微生物学的な因子)から体を防護し、また寒冷や
痛みなどを感知する役割を担っている。
【皮膚の構造】
外界に接する側から、表皮、真皮ならびに皮下組織の3層から構成され
表皮の最外層は落屑として剥がれ落ちる。
また、真皮には皮膚の張力を支えるコラーゲン繊維が分布し、体の輪郭
形状を維持する。
皮下組織は神経、血管、結合組織が豊富で脂肪を合成・貯蔵する。
犬の皮膚はヒトの皮膚と比較して、以下の点で異なっている。
すなわち表皮が薄いこと(ヒトの約1/5から1/6)、アポクリン汗腺
が主であること(エクリン汗腺は四肢の肉球に分布)、毛包から複数の
毛(一次毛、2次毛)が生じることなどである。
【皮膚の機能】
皮膚の機能には外的環境から生体を防護する、水分・電解質などの喪失
を防ぎ生体の内的環境を維持する、体温を調節することなどがあげられる。
また、汗腺や脂腺による分泌・排泄機能、知覚神経による触覚、痛覚、瘍
覚などの感覚器官としての8機能、毛や爪などの産生器官としての機能
ビタミンDの産生など種々の機能を示す。
【皮膚炎の進行過程】
皮膚炎の進行過程(湿疹三角)は、まず、真皮表面の毛細血管の拡張により
皮膚が赤色を呈する紅斑、ついで、真皮内の浮腫と細胞浸潤により皮膚が隆
起する丘疹、浮腫が強まり表皮内に漿液のたまった小水疱、二次感染をおこ
して膿がたまった膿疱、さらに、表皮がただれ湿潤したびらん、痂皮(かさ
ぶた)、落屑、炎症が慢性化して湿潤傾向が軽減し、皮膚の増生、肥厚、不
全角化の認められる苔癬化、治癒という過程を経過するが、これらさまざま
な状態を同時に示すことが多い。
【症状】
急性の湿疹には各種皮疹が混在し、痒みが強く、また、湿潤していることを
特徴とするが、罹患犬がなめたり、ひっかいたりするため、典型的な皮疹が
観察されないこと多い。
一方、慢性のものでは、痒みは強いが、湿潤傾向は減少し、皮膚の肥厚、色
素沈着、落屑などが認められる。
【診断】
皮膚の病変部を注意深く観察し、さまざまな皮疹について、まず原発性の病
変(疾患の直接的な反映;原発疹)であるか、続発性の病変(原発疹の進行
したもの、あるいは二次的に生じた病変:続発疹)であるかをはんていする
ことが重要である。
原発疹は表皮などの比較的表面に、また限局した範囲に認められているが、
続発疹は皮膚の浅層から深層にかけて比較的広い範囲に認められる。
また、微生物学的検査、免疫学的検査などが必要で、さらに、病理組織学的
検査も実施することも必要である。